VII. まとめ

 本件はマスコミでも取り上げられ大きな注目を集めた裁判例であり、本件一審判決については、2016年8月号ニュースレターでも詳しく解説したとおり、労働契約法20条の適用を広く認め、労働者にとっては有利な判決として評価する意見も見受けられた一方、高年齢者雇用安定法により義務づけられた高年齢者雇用確保措置として再雇用したものであり、また、多くの企業では定年前に比べて再雇用者の賃金を3割程度引き下げていること等から、嘱託社員と正社員との賃金に差を設けることは不合理な差別とはいえず、行き過ぎた判決であるとの批判も見受けられたところです。

 本件控訴審判決は、社会の実態に沿った妥当な判断といえますが、本件と同時期に、正社員と契約社員との間での作業手当や通勤手当等に格差を設けることが、期間を理由とする「不合理」な差別として労働契約法20条に違反するとされた事例(ハマキョウレックス事件高裁判決。詳細については2016年10月号ニュースレターご参照)が出されたこともあり、いまだ労働契約法20条の解釈基準が確立されたものとはいえません

 現在、政府において「同一労働同一賃金ガイドライン」について議論され、昨年末に同ガイドライン案が公表されたところでもあり、労働契約法20条の解釈を巡っては、同ガイドラインの帰趨や今後の裁判例の集積を待つ必要があるものと思われます。

 

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