VI. 本件控訴審判決を踏まえた今後の対応

 本件一審判決は、「職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲が同一である場合には、特段の事情がない限り、有期契約社員と無期契約社員とで賃金に相違があることは不合理なものとして無効となる」と判示していたことから、有期契約社員の賃金の引き下げを検討していた企業の中には、有期契約社員と無期契約社員とで職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲に差異を設け、本件一審判決の射程が及ばないよう対策を実施ないし検討していた企業もあるかもしれません。

 本件控訴審判決により、たとえ職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲が同一であったとしても、使用者における賃金引き下げの必要性や有期契約労働者の不利益の程度、代償措置の有無や当該業界における引き下げの程度等、その他の事情を総合考慮し、無期契約労働者との間での賃金の差が「不合理」か否かを判断することが明確になったものといえます。

 ただし、逆に言えば、本件控訴審判決により、職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲に相違を設けたからといって、その他の事情次第では、有期契約労働者と無期契約労働者との間での賃金の差が「不合理」ではない(=合理的)、とは限らないことがより明確になったともいえます。

 また、本件長澤運輸事件と同時期に、定年前に事務職であった社員に定年後再雇用後の職務としてパートタイムでの清掃業務を提示したことが高年齢者雇用安定法の趣旨に反し違法であるとされた高裁判決(トヨタ自動車事件(名古屋高裁平成28年9月28日))が出たこともあり、定年前後で職務の内容を変えすぎても別途違法と評価されるリスクがあることにも留意が必要です。

 

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