Column:平成27年労働者派遣法改正について II. 改正のポイント②

1. 派遣期間規制の見直し(☆)

これまで、専門性が高いとされてきたソフトウェア開発や秘書等の26業務に関しては派遣期間の制限がない一方、26業務以外の業務については派遣期間は3年以内とされてきました。

今回の労働者派遣法改正により、26業務か否かという区別をなくし、すべての業務について、①派遣先の同一の事業所等(工場や事務所等)における派遣労働者の継続的な受け入れについて3年を上限とするとともに、②一人の派遣労働者が同一企業の同一組織単位(いわゆる「課」など)で働くことができるのは3年まで、という切り口の異なる2つのルールへと改正されました。

(1)派遣先事業所単位の期間制限

 

改正法により、派遣先の同一の事業所[1]等における派遣労働者の継続的な受け入れは、3年を上限とすることが規定されました(改正法35条の2・40条の2)。すなわち、同じ工場や事務所等における派遣労働者の受け入れは、3年が上限とされます。ただし、派遣先の事業所が3年を超えて労働者派遣を受け入れようとする場合は、派遣先の事業所の過半数労働組合等(過半数労働組合又は過半数代表者)からの意見を聴取することにより、3年を限度として派遣可能期間を延長することができます。

当該規制の趣旨は、派遣労働者による常用労働者の代替の防止を図るためであるとされています[2]が、3年を超えて派遣先が労働者派遣を受け入れるにあたっては、過半数労働組合等の同意を得る必要はなく、意見聴取で足りることからすると、当該規制が「常用代替の防止」に資するかは疑問の余地がある、と批判されています[3]。

【派遣先事業所単位の期間制限[4]】

名称未設定

 

ア 意見聴取の手続

派遣先は、労働者派遣の役務の提供が開始された日から事業所単位の期間制限の抵触日の1ヶ月前の日までに、その事業所の過半数労働組合等から意見を聴取する必要があります。

その際、過半数労働組合等に対して、派遣可能期間を延長しようとする事業所及び延長しようとする期間を書面で通知しなければならず、意見聴取の参考となる資料[1]を提供しなければなりません。

意見聴取の後は、

  • 意見を聴取した過半数労働組合の名称又は過半数代表者の氏名
  •  過半数労働組合等に書面で通知した日及び通知した事項
  •  意見を聴いた日及び意見の内容
  •  意見を聴いて延長する期間を変更したときは、その変更した期間

を書面に記載し、延長しようとする派遣可能期間の終了後3年間保存し、また事業所の労働者に周知しなければなりません。

イ 対応方針等の説明

意見を聴取した結果、過半数労働組合等から異議があった場合は、派遣先は延長しようとする派遣可能期間の終了日までに、

  • 延長の理由及びその延長の期間
  •  異議(常用代替に関する意見に限る)への対応方針

について説明する義務があります。

また、派遣先は説明した日及びその内容を書面に記載し、延長しようとする派遣可能期間の終了後3年間保存し、また事業所の労働者に周知しなければなりません。

ウ 労働者派遣期間の継続性

派遣先の事業所ごとの業務について、労働者派遣の終了後に再び派遣する場合、派遣終了と次の派遣開始の間の期間が3ヶ月を超えないときは、労働者派遣は継続しているものとみなされます。

(2)個人単位の期間制限

改正法により、派遣先が同一の派遣労働者を、派遣先の事業所に置ける同一の組織単位[6]で受け入れる期間は、3年を上限とすることが規定されました(改正法35条の3・40条の3)。

すなわち、同じ人の同じ「課」への派遣は3年が上限とされる一方、同じ人であっても、派遣先の「課」を変えた場合は、3年を超えて同じ人を派遣として受け入れることができます。

この場合、「II.2−(1)派遣先事業所単位の期間制限」と異なり、過半数労働組合等からの意見聴取の手続はありません。

当該規制の趣旨は、派遣就業を望まない派遣労働者が派遣就業に固定化されることの防止を図ることにあるとされています[7]。

ただし、組織単位を変えれば、派遣先は同一の派遣労働者を受け入れることができます。

かかる取扱いは、就業先を変わることによるキャリアアップの契機を確保する観点から設けられたものですが、当該派遣労働者が他の会社や他の組織単位において派遣就業を継続する結果、派遣就業に固定化されることも予想される、との批判もなされています[8]。

【個人単位の期間制限[9]】

名称未設定②

(3)期間制限の例外

以上のとおり、改正法により、すべての業務について、①派遣先の事業所単位及び②個人単位の期間制限という2つの切り口から期間制限が設けられましたが、以下に該当する場合は、例外として期間制限の対象となりません。

  • 派遣元事業主に無期雇用される派遣労働者を派遣する場合
  • 60歳以上の派遣労働者を派遣する場合
  •  終期が明確な有期プロジェクト業務に派遣労働者を派遣する場合
  • 日数限定業務(1ヶ月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ10日以下であるもの)に派遣労働者を派遣する場合
  •  産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の業務に派遣労働者を派遣する場合 

(4)クーリング期間

事業所単位の期間制限、個人単位の期間制限の両方に、いわゆる「クーリング期間」の考え方が設けられています。

ア 事業所単位の期間制限

派遣先の事業所ごとの業務について、労働者派遣の終了後に再び派遣する場合、派遣終了と次の派遣開始の間の期間が3ヶ月を超えないときは、労働者派遣は継続しているものとみなされます。

なお、派遣先が、事業所で3年間派遣を受け入れた後、派遣可能期間の延長手続を回避することを目的として、形式的に「クーリング期間」を空けて派遣の受入れを再開するような、実質的に派遣の受入れを継続する行為は、法の趣旨に反するものとして指導等の対象となります。

イ 個人単位の期間制限

派遣先の事業所における同一の組織単位ごとの業務について、労働者派遣の終了後に同一の派遣労働者を再び派遣する場合、派遣終了と次の派遣開始の間の期間が3ヶ月を超えないときは、労働者派遣は継続しているものとみなされます。

なお、派遣元事業主が、同一の派遣労働者を同一の組織単位の業務に継続して3年間派遣した後、本人が希望しないにもかかわらず、形式的に「クーリング期間」を空けて再びその組織単位の業務に派遣することは、派遣労働者のキャリアアップの観点から望ましくない、とされています。

(5)期間制限に違反した場合 

後述のとおり、改正法により新たに設けられた事業所単位の期間制限、個人単位の期間制限、いずれに違反した場合であっても、労働契約申込みみなし制度の対象となり、派遣先が派遣労働者に対して、その派遣労働者の派遣元事業主における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなされます(労働者派遣法40条の6)。

 

上記記事の注釈は以下をご参照ください

[1] 同一の「事業所」に該当するか否かは、工場、事務所、店舗等、場所的に他の事業書から独立していること、経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること、一定期間継続し、施設としての継続性を有すること等の観点から実態に即して判断されるもので、雇用保険の適用事業所に関する考え方と基本的には同一のものとされています。

[2] 「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の14。

[3] 小西康之「『期間』規制と労働者派遣のこれから」(ジュリスト2015年12月号)20頁参照。

[4] 出所:厚生労働省・都道府県労働局「平成27年労働者派遣法改正の概要」(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000098917.pdf)

[5] 当該事業所の派遣労働者の受け入れの開始以来の派遣労働者の数や、派遣先が期間を定めないで雇用する労働者の数の推移等。

[6] いわゆる「課」や「グループ」等、業務としての類似性や関連性があり、組織の長が業務配分、労務管理上の指揮監督権限を有するものとして、実態に即して判断されます。
[7] 前掲注2参照。
[8] 前掲注3・21頁参照。

[9]出所:厚生労働省・都道府県労働局「平成27年労働者派遣法改正の概要」(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000098917.pdf)

目次

I. はじめに

II.改正のポイント.

1.労働者派遣事業の許可制への一本化

2.派遣期間規制の見直し

3.雇用安定とキャリアアップ

4.派遣労働者の均衡待遇の強化

5.労働契約申込みみなし制度

6.募集情報の提供義務

III. 総括

 

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