取締役の利益相反取引—責任限定契約の締結と利益相反取引

2016-12-07

【質問】

このたび、当社の非業務執行取締役Xから、当社とXとの間で、取締役の責任について限度額を定めて欲しい旨の要望を受けました。

当社としては、かかる要望に応えてXとの間で責任限定契約を締結することに異存はありませんが、このような契約の締結は利益相反取引に該当するでしょうか。

 

【回答】

会社が非業務執行取締役であるXの責任を限定する旨の契約を締結することは、直接取引による利益相反取引に該当するものとして、取締役会において利益相反取引の承認を行うとともに、当該決議において契約を締結するXについて特別利害関係人として取り扱うことが適当と思われます。

 

【解説】

  • 利益相反取引とは

「利益相反取引」とは、取締役がその忠実義務に違反して会社の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図る取引をいいます。

会社法上は、会社法356条1項2号及び3号の取引を総称して「利益相反取引」として規定しています。なお、同様の趣旨に基づき、利益相反取引とは別に、取締役が自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をしようとするときはあらかじめ株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会。会社法365条1項)の承認を必要とする、競業避止義務が規定されています(会社法356条1項1号)。

利益相反取引のうち、会社法356条1項2号に規定する取引は、取締役が自己又は第三者のために会社と行う取引(直接取引)であり、会社法356条1項3号に規定する取引は、会社が取締役以外の者との間で行う、会社と取締役の利害が相反する取引(間接取引)をいいます。

 

  • 責任限定契約

責任限定契約とは、会社と業務執行取締役等以外の取締役との間で、当該取締役等の会社に対する責任について、責任の限度額をあらかじめ定める旨の契約をいいます(会社法427条)。

責任限定契約は、非業務執行取締役の賠償責任に関する不安を取り除くことが目的であり、類似の制度として取締役等の責任の免除(会社法426条)があります。

もっとも、取締役等の責任の免除の場合、取締役・取締役会が実際に免除の決定をするか、また、免除額がいくらになるかについて不確実な点が残りますが、責任限定契約であれば、事前に責任の限度額が確定するため、取締役にとってはより安心できる制度といえます。

かかる責任限定契約については、定款変更時に株主総会の承認を得ていること等を理由に、改めて利益相反取引としての承認は不要であると整理する余地もないではありません。

もっとも、外形上、直接取引による利益相反取引に該当するものとして、実務上は、取締役会において利益相反取引の承認を行うとともに、当該決議において契約を締結する相手の取締役については特別利害関係人として取り扱うことが適当と思われます。

 

  • ご相談のケースについて

会社が非業務執行取締役であるXの責任を限定する旨の契約を締結することは、直接取引による利益相反取引に該当するものとして、取締役会において利益相反取引の承認を行うとともに、当該決議において契約を締結するXについて特別利害関係人として取り扱うことが適当と思われます。

 

(注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の法例、判例等との一致を保証するものではございません。また、個別の案件につきましては専門家にご相談ください。

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