III.違反時のリスク

1.刑事処分

前記のとおり、違法な時間外労働については刑事罰が規定されており、労働基準監督官は、労基法違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行うものとされています(労基法102条)。

すなわち、労働基準監督官は、刑事訴訟法の定めるところにより、裁判官の発する令状に基づき逮捕や捜索・差押などの強制捜査を行い、検察官に対して事件送致を行うことができるものとされています。

とくに、「過重労働撲滅対策班」(いわゆる「かとく」)が設置された平成27年以降、労基法違反送検事例が急増していることに注意が必要です。たとえば、東京労働局においては、平成26年度31件(うち労働時間関係違反4件)だったものが、平成27年度41件(うち労働時間関係違反19件)へ、大阪労働局においても、平成26年度34件(うち労働時間関係違反4件)だったものが、平成27年度49件(うち労働時間関係違反18件)へと増加しており、労働時間関係法違反に関する送検事例は平成26年度と比べると5倍弱へと急増していることが見て取れます。

2.行政処分

労働基準監督官は、労働基準法の実効性を担保するために、「事業場、寄宿舎その他の附属建物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる」とされており(労基法101条1項)違法な長時間労働を行っていた場合には、行政指導として是正勧告等の処分を行うこととなります。臨検は、事前予告の上実施されることが多いものの、サービス残業等の疑いがある場合等には抜き打ちで実施されることも珍しくありません。

本年4月には、長時間労働対策として、重点監督対象を月100時間超の残業が疑われる事業場から月80時間超の残業が疑われる事業場へと拡大する方針が明らかにされており、臨検の対象は拡大の方向にあります。そして、そのための体制として、平成27年4月に東京労働局及び大阪労働局に「かとく」が設置されたことに加え、本年4月には厚生労働省内に「過重労働撲滅対策班」が新設されるとともに、現状、「かとく」は東京労働局と大阪労働局にしか設置されていないことから、全国47の都道府県労働局に「過重労働特別監督管理官」を配置し、監督指導・捜査体制を全国展開することとしています。

また、平成27年5月より、過重労働対策の一層の強化として、社会的に影響力の大きい企業が違法な長時間労働を複数の事業場で繰り返している場合には、都道府県労働局長が経営トップに対して、全社的な早期是正について指導するとともに、その事実を公表するとの方針が明らかにされています(※1)。かかる方針を受けて、本年5月19日には、千葉労働局は、株式会社エイジスに対して、違法な長時間労働を是正するよう勧告するとともに社名を公表しています。(※2)

※1  「違法な長時間労働を繰り返し行う企業の経営トップに対する都道府県労働局長による是正指導の実施及び企業名の公表について」(平成27年5月18日基発0518第1号)。
※2 https://chiba-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/chiba-roudoukyoku/houdou/20160519.pdf 参照。

 

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